働きやすさは風土にあると気づいたある一日

 

2011年のある日の気づきを境に 「日本の働き方を変えたい」 と、志を抱きました。

それまでは、仕事は辛くて当たり前、身を粉にして徹底的に考え抜いて絞り出してこそ革新的なソリューションが産み出されるものだと信じていました。いわゆる「仕事ってのは辛いもんだ」という大人の決め台詞そのものを信じ切っていました。そのため、何か良い結果を残そうと全身全霊で努力しようとするとすぐに、仕事と家庭の両立が難しくなり、家庭においても仕事においてもどちらに対しても孤独感や罪悪感を抱く結果を招きました。その状況に耐えきれず仕事を諦める決断もしました。

2011年 当時勤めていた外資IT企業でコンサルティングサービス部門での仕事を終えたある一日に気づきを与えられました。
朝在宅をし、昼に学校近くのレストランでママ友とランチをし、娘の中学の懇談会に出席し、夕方帰宅してリモートワークを再開し、一時仕事を休止して夕飯を作り、深夜北米時間に合わせて仕事を再開する。
そんな1日でした。

ふと夜1日を振り返り、「はー今日はよく働いた!そしてママ業も完璧にできた!」と思った時に気づいたのです。「あれ、なんだこの達成感は!」

この1日が私が「働きやすさは風土にこそある」と気づいた1日です。

さてあなたにはその理由が分かりますか?

そう問いかけると 「リモートワークや在宅ワーク制度がありその制度を駆使した1日だからですか?」や、「リモートワークを支えるツールが整っていることですか?」と大半が答えてくださいます。

しかし、同様の働き方は以前の会社でも出来ていました。私自身はワーキングマザーとして特別に様々な制度やツールなどの権限を与えられていたので、その日の働き方自体は既にできていました。 

「では、前職ではワーキングマザーに対して冷たい職場環境だったのでしょうか?」と問われるとそうではありません。むしろワーキングマザーとして特別待遇を受けてとても親切にしていただきました。私という個人を大きく持ち上げて信頼してくださった職場でした。

その日の夜、とても心が軽くなった私がふと気づいたことは、「今日私は、『すみません』を一言も言ってない」私自身が罪悪感を抱いていない言うことだけでした。

与えられた時間をやるべきことだけに集中しそれまでにない達成感と幸福感に満たされる経験から、孤独感や罪悪感を抱かない環境、性別や年齢などだけでなく働き方についても同調性だけのつながりではなく、多様性の個々の違いを他者に対しても自分自身に対しても認め合うインクルーシブな風土が、働きやすさに最も重要であると強く認識した1日でした。

先にも書きましたが、以前の職場ではワーキングマザーとして特別優遇を受けていました。ツールも制度もそしてみなさんとても親切に「ワーキングマザーで辛いだろうが今だけだきっとすぐに子供は成長するがんばれがんばれ」と応援してくださいました。いつも「本当に申し訳ない」と皆さんへの感謝だけでなく後ろめたさも抱いていました。そのせいか日常、使う必要がないところでも「すみません」を連呼していました。きっと当時の上司は「そんなに『すみません、すみません』と言わなくてもいいのに」と思っていたかもしれません。さらなる問題は「すみません」を伝えること自体を私自身が重く受け止めていたかと言うとそうではなく、「すみません」「あーすみません」「ほんとっすみません」と言うように、無意識に枕詞程度に「すみません」を連呼していました。「もうすみませんなんて言いたくない!!」なんて思ったことは一度もないですし、すみませんは定型文としての扱いをしていました。


ある少年野球チームが、毎回の練習の最後に優勝が決まった瞬間の「やったー!勝ったぞ!!」の表現をする練習を取り入れたところ本当に全国制覇をしたと言う話はテレビでも紹介されているので有名かと思います。また、面接の前に 2 分間両手を上げてバンザーイと一位でゴールテープを切った時のポーズをとると、面接が成功するという研究結果をAmy Cuddy さんの TED スピーチから学びました。心から態度は生まれるが、態度からも心が生まれるというものです。

私のように本心からではなくても、毎日多種多様な「すみません」を連呼している人が100%の能力を発揮できるはずはありません。無意識に「すみません」ということで自分自身に毎日じわりじわりと後ろめたさを植え付け意識に浸透させる行為だからです。そしてその「後ろめたさ」影響はゆっくりと私を取り巻く組織へも働きかけます。当時はそのことも知らずに、元気な「すみませーん!」を発しつつ自分自身の心をキュッと小さくしていたのかと思うと、両立ができずに後ろめたさばかりを感じていたその当時の自分に教えてあげたいくらいです。

人、時間、状況、さまざまな要素が絡み存在するその場の風土は、完成したものではなく、移ろい行くもの。その場の人の感情がその場に現れ日々の繰り返しの中で風土として定着していきます。もし当時の私が、自分自身の小さな行為もその場を形成するエッセンスになるという事実を知っていたら、十分に優遇されていた環境にいたのですから私自身の意識と行動を変えるだけで、もしかすると後ろめたさを抱かず100%のパフォーマンスを発揮できたかもしれません。

私は今、過去の自分へ伝える思いで、自走するボトムアップ組織による組織風土改革を進める活動を進めていきたいと思っています。

風土は人が集まるところ、その毎日の繰り返しが、その場に根付き風土として醸成される。働く人一人一人が自分自身の働き方をより良くすることを目指し、インクルーシブな関係性の中で、ひとりひとりの多様 性の違いが気づきを生み、一人では成し得ないイノベーションを起こす、そんな職場はきっと生産性も高く業績も伸びる でしょう。日本にそのような社員が自らより良くを目指して自走する、働きがいのある組織が増えることを心から願っています。

💡TIPS💡: 私の「すみません」ストーリーに感銘を受けたある社長様が後日ご連絡を下さいました。社内で相談し「すみません」使用禁止令を敷き、代わりに「ありがとう」を使おうと社内のルールを敷いたそうです。それだけで社内の雰囲気が大きく変わったとのことで、是非みなさまもご参考にされてください。